恋ごころトルク

 火にかけたフライパンが温まってきたところに、豚バラと玉ねぎを入れて、砂糖とめんつゆを入れる。いつもこの味付け。お店で店長が作るのとはちょっと味は違うけど、これはこれで美味しい。砂糖ちょっと多め。あ、あと忘れてはいけないのが生姜ね。チューブの生姜を少々。本当は生の生姜をすりおろしたいところ。ざっざと炒めて、はい完成。

「さー、できあがり」

 ピンク色のどんぶりにご飯を盛り、その上に豚バラと玉ねぎをダイブ。豚しょうが焼き丼の完成。

「お腹空いたね」

 きなこに声をかけて、どんぶりと器に分けた筑前煮を小さいテーブルに置く。ふわふわと湯気が立って、美味しそうだ。光太郎さんが買っていくから、いつも食べたくなるんだもん。今夜、作って食べようっていつも思う。

「いただきまーす」

 口いっぱいに頬張ると、豚肉の甘みと脂身、玉ねぎの食感が踊る。ああたまらない。

 いつもサクラクックで豚しょうが焼き丼を買うあの彼は、朝と夜はなにを食べているんだろう。自炊してるのかな。それとも実家? ああ、結婚してるのかな……指輪はしていないけれど。彼女、居るのかな。

 どこが着地点かも分からないあたしの片想いは、成就してもしなくても、きっと豚しょうが焼きを見るたびに思い出すんだろうなって、食べながら思った。



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