恋ごころトルク
 *

「ただいまー。今日は何してたの?」

 あたしの声に反応したセキセイインコのきなこが「ピヨッ」と鳴いた。

 自転車なのに買いすぎてしまった。自転車って積載能力低いからね、それは仕方ない。荷物を積むようには出来ていないものだもの。カゴに入らないものはリュックに詰めて。

「ご飯食べた?」

 きなこは女の子。だからお喋りはあまり得意じゃないけれど、あたしの言葉を真似してるような時がある。きっといってらっしゃいとお帰りくらいは言ってると思う。全部「ピヨッ」だけど。

 お店で余ったキャベツをビニールに詰めて持って帰ってきた。それをあげる。嬉しいのか文句言ってるのか分からないけれど、結構ガツガツときなこは食べている。

「今日もね、来たよ。光太郎さん。好きなんだねぇ、豚しょうが焼き」

 あたしも好きだよ。豚しょうが焼き。

 アパートに帰ってくるのはいつもこの時間。お店の閉店が20時。お店とアパートは自転車で15分ほどの距離だ。サクラクックは店長夫婦の自宅兼店舗。あたしは簡単に後片づけを済ませて、先に帰らせて貰う。寄り道しないで帰ってきて20:20。コンビニとか寄ると20時半。食べ物を扱うお店だから、食費は大変助かっている。残り物とか、冷凍のものパックに詰めて持って帰って来たり、お店で食べたりできるし。店長と奥さんはあたしに甘い様な気がするけれど、その優しさ、ありがたくちょうだいしています。だって、食べないと生きていけないもの。

 今日は、コロッケとサラダ。筑前煮。これらをいただいて帰ってきた。あと残ったご飯をおにぎりにして持ち帰り。おにぎりの数は5個。

 5個全部食べるわけじゃないので、3個を冷凍庫へ入れる。残った2個のラップを剥いて、フライパンを取り出す。冷蔵庫に買ってあった豚バラと玉ねぎを取り出して、包丁で適当な大きさに切る。トントンと音が広くないキッチンに広がる。ひとり暮らしをしているこのアパートは、サクラクックで働いてる期間と同じなので4年。もうそんなになるんだなぁ。


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