秘密が始まっちゃいました。
実際、礼服仕様のダークスーツにポケットチーフをつけた荒神さんは格好良かった。
普段より無造作に上げられたクセのある黒髪が、彼を舞台挨拶の俳優くらいにこなれて見せていた。
ちょっと、コレ、確実に新郎より目立つんじゃないの?
福谷に花持たせてあげらんない格好良さ。

荒神さんが彫りの深い顔を私に寄せると、こそっと耳元にささやく。


「じゃ、今日は頼むな」


サポートを頼むという意味でだろう。
式の時程は可能な限り瑠璃に聞き出してある。彼にマスクやメガネが必要なタイミングは、事前にスマホのバイブを鳴らす約束はしてある。
私はしっかりと頷いた。



「はぁ~、やっぱイケメンだわぁ」


荒神さんが一販課の仲間のもとに帰ってしまうと、横でユカが言った。
経理部のユカは一昨年結婚し、もうじき産休に入る身だ。


「やらかし番長だけど、荒神さんの顔も雰囲気もバディも最高にイケてるよね!」

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