秘密が始まっちゃいました。
「で、この店、予約が半年先まで一杯だって言うからさ、キャンセルが出たら優先して入れてもらう約束しといた」


「うわ、最高じゃないですか!連れてきてくださって、ありがとうございます!」


「いえいえー、今日は望月へのお礼なんで。俺もできることは精一杯しますよ」


やがてソムリエがワインを持って現れ、私も荒神さんもぽけっとその解説を聞いた。
オードブルが運ばれてくる。
ワインもお料理も文句なしに美味しかった。ちょっと感動的なくらいだ。

でも、ちょっぴり疲れてしまうのは、私が庶民だからだろう。
すると、メインを食べ終わった頃に荒神さんがこそっと言った。


「なんか、肩こるな」


私は思わずふき出す。注文も、振る舞いもスマートで、さらに見た目もイケてる荒神さん。
でも、考えていることは私と一緒だった。
そんなことが妙に嬉しい。


「ま、『六さし』よりは」


「今度、また『六さし』に行こう。俺、あっちの方がスキ」


今度。
荒神さんが言う今度は社交辞令だろうか?それでも嬉しい。
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