秘密が始まっちゃいました。
私たちは二階席でカクテルを飲んだ。
船は出航し、ほんの2時間ほどのクルーズが始まる。

荒神さんは席につくと手は離してくれたけれど、私のドキドキは治まらない。

一度、荒神さんに押し倒されたことを思い出す。
あんなのは、彼みたいなイケメンにはおふざけだっただろうけど、私には忘れられないシーンだ。
真面目っこOLにはあんなシチュエーション自体、縁がなかったもん。

今、目の前にいる荒神さんは、すごく格好いい。いつだってイイ男だけど、今日の特別なシチュエーションに、私はまたやられちゃってるみたい。

私ってシチュエーションに弱いのかな。結構、単純な女……。
でも、この胸の高鳴りは嘘なんかじゃない。


「な、デッキに出てみないか?」


荒神さんに誘われるままに、私は二階フロア直結のスカイデッキに出た。


「うわわっ!すごい風!」


外に出た瞬間、風に煽られる。よろける私の身体を荒神さんががっしり受け止めた。


「あはは、どおりで俺たち以外、人がいないわけだ」
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