秘密が始まっちゃいました。
私を見つけ、羽田さんががっちり視線を固定する。


「お話があるんですけど、お時間いいですか?」


聞いておきながら、有無を言わせない雰囲気に、私は目の前の菓子パン群を真子の方に押しやった。ニコッと作り笑いをすると立ち上がる。

はぁ。
もう、起こったじゃん、面倒事。



同行すると言ってくれた真子の申し出を遠慮し、私と羽田さんは昼時の早稲田通りに出た。
人ごみを掻き分け、会社近くのカフェに空いた席があったので、私たちは向かい合う。


「昨夜は荒神さんとお過ごしでしたか!?」


注文もそこそこに羽田さんが切り出した。
私は一瞬言葉に詰まったけど、すぐに否定する。
荒神さんが羽田さんに『六さし』のことを話すとは思えない。きっと、かまをかけているのだ。


「一緒じゃないよ」


私の否定に、羽田さんはあっさりと納得した。
目の前にきた紅茶を一口飲むと顔を上げる。

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