秘密が始まっちゃいました。
「この調子で明日は大丈夫ですか?」


「うーん、最悪は途中から、腹が痛いって中座だな」


荒神さんが新たなビールで目元を冷やしながら答える。

もう最初っからその手でデートをキャンセルさせてもらえばいいのに。
そんで後日、食事か何かでごまかせばいいのに。


「あとは、奥の手がひとつ」


荒神さんがぽつんと言った。
私も新しい缶チューハイを開けたところだ。訝しく荒神さんを見つめる。


「ま、これはまだ考え中だから保留しとく」


「そうですか、いい手なら使っちゃってくださいね。バレるよりマシなんでしょ?」


「はるかにマシな手。っていうか俺得の奥の手だから、使おうか迷ってんだよ」


俺得?なんだそりゃ。
ま、でもその辺の判断は荒神さんが自分でしてくださいな。
私には関係ないもん。

もしかして、泣いてるところを羽田さんに見せて、嫌われようとか考えてるのかな。
そうだとしたら、逆効果だけど。
忠告するのも何か……うーん。
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