秘密が始まっちゃいました。
「荒神さん、なんか変じゃないですか?こずるい罠にハメられた感があるんですけど……」


「でも、おまえだって周りに否定しなかっただろ?付き合ってるって話」


だって、あの時は私が社内で否定したら、羽田さんの手前マズイと思ったんだもん。
荒神さんの涙の秘密を守らなきゃって……。


「考えてみたら、この一連の出来事ってみーんな荒神さん主導の荒神さん都合で成り立ってません?私の意見とか、いつだって軽く無視ですよね!?」


私は今まで振り回されてきた一連の出来事を振り返る。

結婚式のための特訓とか、羽田さんの件とか、社内に広まった交際報道とか、派手なアプローチとか!

ここ最近、彼の気持ちに素直になれない自分ばっかり責め続けてきたけれど……。

考えてみたら、私、この男の言うなりになって振り回されてるだけじゃん!
恋心以前の問題じゃん!


「そうだけど?」


荒神さんが余裕たっぷりに微笑んだ。例の悪い男のスマイルだ。

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