秘密が始まっちゃいました。
荒神は目の前で眠る望月を見下ろし、まったく釈然としない気持ちだった。

失敗のカップルごっこの後、予定通り三本目の映画を見ているうちに眠くなってきた二人は、気付けば寄り添い合って眠っていた。
先に起きだした荒神が望月を抱き上げ、ベッドに寝かせて、今の状況に至る。


ゆうべの失策は心を重くするものの、ともかく現在の状況を整理する。

待てよ?
油断しまくって寝ているのは心外だが、今の状況は美味しいぞ?
目の前には好きな女が、簡単にいただけそうなシチュエーションで横たわっている。

ゆうべは拒絶されたけれど、今なら……。

荒神は考えて、すぐに首を振った。

馬鹿なことを考えるな。
ここで欲望に任せてみろ。大変なことになる。

たとえば、望月のモコモコした女子らしい部屋着を剥いて、挑発的に薄く開いた唇にキスをして、途中で目覚めようものなら「誘ったのはおまえだ」とでも嘘を吐いて、彼女を抱いてしまったとしよう。
そんなことしようものなら、100パーセントの確立で望月は荒神から離れて行くだろう。
簡単に流されてくれる女じゃないのだ。
恋愛の進展どころか、人間として完全にナシになってしまう。気の強い彼女のことだ、訴えるくらいはするかもしれない。
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