秘密が始まっちゃいました。




範囲を新宿まで伸ばすべきかなんて考えていた時だ。
毘沙門天の手前、路地に入ってすぐに居酒屋の門構えを見つけた。
『六さし』と、看板のついた二階建てのお店だ。小綺麗で割烹ともいえそうな外観だけど、外に出されたブラックボードには居酒屋メニューが並ぶ。


「荒神さん!ここ!」


「俺も今、いいかなーって思ってた」


ニヤリと笑う荒神さんに、私も頷き、私たちはお店の引き戸に手をかけた。

一階はテーブル席とカウンター。サラリーマンや地元のおじさんたちで混み合っている。

私たちはカウンターの隅に座を占めた。


「ご注文は?」


すぐに作務衣姿のおじさん店員がやってきた。


「生ビールふたつで」


荒神さんが勝手に頼む。
ちょっとー、私がビール飲めない女子だったらどうすんのよ!

ま、飲めますけど。
大好きですけど。
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