秘密が始まっちゃいました。
「おはようございます……もう目が赤いんですけど……」


現れた荒神さんは半袖のデザインシャツにジーンズという出で立ち。
その私服は似合っていてカッコいいんだけど、目がすでに真っ赤だ。
ついでに言うと鼻も。


「あー、朝から一本見たから」


「あ、そうなんですか?」


「『ニューハンプシャーの空に』……ダメだ、あれ名作過ぎる」


私を招き入れながら、そう言って思い出し涙を拭う荒神さん。

うーん、こんな姿、会社の人間に言ったって誰も信じないんだろうな。
言うつもりもないけど。


「お邪魔します。広いですねぇ」


通されたのはリビングダイニングだ。
ひとり暮らしで結構都心のマンションなのに、ざっと12畳はある。


「あー、でも寝室は狭いよ。4畳しかないし」


荒神さんはあまり興味なさそうに答える。
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