10年越しの再会

「結構この球場広いんやなー」

しばらく球場の周りを歩いていると、向こうの方から声が聞こえてきた。

『出てきたーー!花田くん!おめでとーっ』

『ピッチングすごかったぁ!さすが〜っ』

『今年の野球部最高〜!』

たくさんの女子たちの声を浴びながら南ヶ丘高校の野球部員達と一緒に耳にイヤホンをした花田くんが出てきた。

私の足が止まる。

花田くんはイヤホンを片方外し、女の子達に笑顔で受け答えをしていた。


その笑顔に胸が締め付けられる。


「………………………っ!」





花田くんと一瞬、目が合った。



あぁ、やっぱりそうだ。花田って苗字を聞いた瞬間からあった胸の奥の違和感がすっと抜けてゆく。

気づいたら私は反対方向に走り出していた。

胸の奥が熱い。

まさかこんなとこで会えるとは思わなかった。




「……っ…智希……」


私は無我夢中で走り続けた。

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