マー君2(原作)
「それは違うと思うな」

恭介は視線を変えず、黙々と話し続ける。

「最近思うんだ。僕らがここに来たからこんなことになったのかと?」

「それはどういう意味だ? 恭介」

「言葉の通りだ よ」

恭介はフェンスを力強く掴む。

「これは決まっていた運命なんじゃあないかってさ。僕らがここに来ることは、ずっと前から決まってた」

「運命ねぇ」

一樹は顔をしかめ、本を閉じた。

「俺は嫌いだな。そんな目に見えない証明できない物は。俺が信じるのは目に見える真実だけだ」

それを聞いた恭介がフェンスから顔を離し、何も言わず屋上を出ていった。一樹もまた黙ったまま屋上を出ていく恭介の背中を見送った。

と、恭介は途中で歩を止め一樹に背を向けたまま言った。まるでそよ風のように透き通った声で。

「全てが真実ならいいけど、世の中そんなシンプルにできてないよ。この世は真実より偽りの方が多いのかもしれない」

意味ありげな言葉だけ置いて、恭介は屋上から出ていった。

一樹はしばらく恭介の出ていったドアを見つめながら、彼の残した言葉の意味を考えた。
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