きらいだったはずなのに!
ふと頭の端っこに、桐島さんの顔が浮かんだ。
今日のことを話したら、また褒めてくれるかな。
『頑張ったじゃん』なんて、笑いながらあたしの頭を犬みたいに撫でて。
こうしてあたしは、薄々と気づくんだ。
桐島さんのことが頭に浮かんでしまったことで、自分の気持ちに。
あんなに嫌だったカテキョの時間、週明けの月曜日が楽しみだなんて思っちゃってることに。
さっき告白してきた相手が隣にいるのに不謹慎な気もするけど、それでもほんの少し高鳴った胸を無視することはできなかった。
赤い屋根が目印の我が家に近づいてきたら、遠目に見知った姿が目に映った。
スーツを着ている細身の後ろ姿ではなかったけれど、あれは確実にいま思い浮かべていた桐島さんだ、と。
内心喜ぶあたしの横で、悠斗がどんな顔をしていたかなんて、その時のあたしは知るはずもなかった。