きらいだったはずなのに!

 ……なんか、肩で息しながらキレられたんですけど。


 あれ? なんであたしが怒られてんの?


「あんたがパンツとか言うから落ちたんじゃん! 頼らなくてもそんなこと言われなかったら落ちなかったし、ファイルくらい自分でとれたし!」


 あー、あたし可愛くない。


 ここで、『ごめんね。次からはお願いします』とでも言っておけば可愛い女の子になれるのに。


 ムカついてどうしようもなくて、桐島さんから顔を背けた。


 どさくさに紛れてあんたとか言っちゃったけど、別にいいや。


 この人だってあたしのこと叩いたもんね。


 これでおあいこだ。


「……かわいくねーやつ。そんなに俺のことがきらいかよ」


「え」


 なにそれ、なんでそんな元気ない声出してるの?


 いつもの憎まれ口が嘘みたいな態度で、なんだかあたしが悪いことをしたような気分になってくる。


「桐島さ……」


 あたしが声をかけると彼は立ち上がって、あたしがさっき取り損なったクリアファイルを軽々と本棚から抜き取り、勝手にぺらぺらとめくりだした。


 その様子を見ただけでは、悲しいとか、怒りとか、桐島さんがなにを思っているのかなんてわからなかった。

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