きらいだったはずなのに!

 思わず肩を落とすと、頭になにかが乗った。


「だから、俺がいるんだろ?」


「え?」


 嫌味ばっかり言う桐島さんには似合わない、頼もしい言葉。


 そんなことを言ってもらえるなんて思ってなかったから、ちょっとびっくり。


 この人でも、気の利いたこと言えるんだ。


 少しだけ見直した。


 顔を上げると、自信ありげな顔で笑っている彼が目に入った。


 うん、普通にかっこいい。


 ちょっときゅんってした。


 頭に乗っているのは、この人の右手。


 わしゃわしゃーっと髪を乱されて身をよじったけど、実はそれほど嫌ではなかった。


 なんだか、この人がいれば大丈夫な気がする。


 不思議とそう思った。


「で、なんで泣いたの」


「だから、痛かったから」


「睨んでたじゃん」


「だって、なんかムカついたし」


「あー、おまえ怒ると泣くタイプね。それと、今日のことに懲りたらスカートはくのやめろよ。俺だって粗末なもん見たくないですしー」


 ……やっぱり、桐島さんは桐島さんだ。


 さっき思ったことは、前言撤回しようと思う。


 でも、こういうやり取りはキライじゃないなあなんて。


 そう思うから、次のカテキョの明後日も、スカートはいて待ってようと決めたのは、あたしだけの秘密。

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