《実話》Last Love〜命を懸けた愛〜
「森山さんどうぞ。」

看護婦の明るい声に、苛立ちさえ覚える弘樹とは逆に、至って冷静な英美。

すっと立ち上がり診察室の扉を叩いた。



コンコン―――



「どうぞ。」

英美は自分の思いを手に込めて力強く扉を開けた。

「失礼します。」

軽く頭を下げ、椅子に腰を落とす。

「さっそくですが…」

高野先生が話を切り出した。

きた…

英美はそう思い一つ息を飲んだ。

「やっぱり中絶しません。」

英美は高野先生よりも早く口を開いた。
< 273 / 348 >

この作品をシェア

pagetop