おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「つらくて…本当につらくて…ひっく…だから花菜がうらやましかった…だから花菜に嫌なこと言っちゃいそうで…」



声にならない声は私の本当の気持ちを話し始めた。



つらかった…
くるしかった…




お母さんにも、陽にさえも気をつかって言えなかった言葉。




【うん。そうだよ。麻那、つらかったんだよね。】



「つらかったの!!わたし…つらくて…苦しかっ……」



泣きじゃくって、電話を持つ手がすべる。



私は…つらかったんだよ。



「花菜が…花菜みたいに…なりたいのに…なれなくて…だから花菜に嫉妬したくないから…」




つまらない意地も何もなくなった私は思うままに全部話し始めた。




【そうだよ。それでいいんだよ。赤ちゃん……いなくなっちゃったでしょ……その気持ちは誰でも持つはずだよ。なのにそれにウソついたらだめだよ。】




壁を壊した後の花菜は優しく私の気持ちを認めてくれた。
どんなに黒くて汚い気持も全部。

当たり前だよって…




「つらかった、つらかった!ねぇ、花菜……つらかったよぅ…」




ずっと言えなかった「辛い」って言葉を胸にあるだけ、吐き出した。



【つらかったね。つらいよ…それは。】




そのたびに花菜は、受け止めた。




花菜は…不思議な子だね。





胸の中に引っ掛かって取れなくて、もがいて苦しかった大きな岩を。
あっさりどかしちゃったから。







やっと、深呼吸ができるようになったよ。







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