おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「ありがとう。花菜。」

泣きつかれて落ち着いてきた私は花菜にお礼を言った。


【麻那はなんだかんだ抱えるから。良い子ぶらなくていいんだよ、そうゆう時は。】



「……うん。」


いつもの花菜。






【麻那……無理に元気にしなくていいんだよ?無理するのが一番つらいから。】



「……うん。でも、そろそろ乗り越えなくちゃね。」


花菜は、すかさず言葉をはさんだ。




【乗り越えなくてもいいんじゃないかな…麻那は…赤ちゃんのこと忘れたいの?】

「違う!私はあの子のことは絶対忘れない!」

それだけは違う!
あの子のことを忘れるなんて絶対にできない!



必死に否定すると花菜は話し始めた。






【乗り越えなくてもいいんだよ。それってなんだか、想い出にする……みたいで現在進行形じゃないんじゃない?】



「え…」



確かにそうだ…

私は乗り越えよう、乗り越えようって必死で…

その気持ちの意味なんて考えてなかった…





【麻那の赤ちゃんはずっと一緒でしょ?そのままでいいんじゃないかな…?】



「その…まま…?」



【乗り越えたら会う、乗り越えたら遊びに行く……ってずっと麻那はメールに書いてたけど。そんな条件つくるから身動きとれなくなっちゃうんだよ。】



【だって、赤ちゃんは麻那とずっと一緒でしょ?ある意味絶対に離れることはできないくらい強い絆だよね。】



一緒……?




そっか…




私とあの子たちは…今でも私と一緒にいるんだよね…




「そう……だね…。私、なにやってたんだろ。これじゃ忘れようとしてんのと同じだね。」



【そうだよ。そのままでいいんだよ。】



軽くなった。




やっと前が見え始めた。




そんな気がする。




そうだ…今日は………

新しい始まりみたいな気持ちにさせてくれた今日という日は…





「ありがとう、花菜。花菜……不思議なんだけどさ。今日はね、」


【ん?】






「今日はね、3月14日。あの子が生まれるはずだった日なんだよ。」




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