おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「ありがとうございました~」

薬局で買った妊娠検査薬を隠すように素早く鞄にいれる。

ドクン…ドクン…

こんなのおかあさんに見つかったら大変だから
デパートのトイレでやろう。

ドクン、ドクン、ドクン…

トイレに向かううちに心臓が飛び出しそうな程の速さで揺れる。

バタン。

トイレのドアを閉めて深呼吸。

買ってきた妊娠検査薬の箱をもう一度よく見る。
線が出たらアウト…か…

その情報だけを箱の裏の説明文から読み取り、震える手で検査を始める。


どうしよう…
どうしよう…

苦しいくらいの緊張感の中でも、私は10、11…と秒数を頭の中で数える。

52、53…60……1分……


もう結果は出ているはず。
見たいような見たくないような…

大丈夫。まさかでしょ。

瞑った目を薄く開け、細い棒の小窓を盗み見る



……
………

出て…ない…!


線は一本。
陰性だった。
< 5 / 185 >

この作品をシェア

pagetop