おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
【マンションのエントランスに着いたよ】


お母さんからのメールを読み、ダルい体を玄関まで動かす。



気持ち悪い……




つわりがピークを向かえていてほとんど主食は食べれていない体はちょっとそこまでの距離も遠く感じる。



この前電話したのはつい2、3日前なのに、私の体調の激変に驚かせちゃうかな…




少しだけ躊躇しながら玄関を開けると正午頃の強い日差しが容赦なく降り注ぐ。


外出する日は朝か夕方の涼しい時間帯を選んでいたので太陽の強い光りは久しぶりだった。



お母さん…どこだろ…


下を見ると歩いてくる見慣れた人影が見えた。



「麻那、大丈夫なの?」



聞きなれた声。

「うん。暑いね。」



元気な姿で会ったのは5月。

あれから私はずいぶん時がたったように思ったけど、そこには何も変わらないお母さんがいた。



「痩せたんじゃない?まだつわりあるの?」



あ、この表情はかなり心配してる表情だ…



強い日差しと、つわりのピークになかなか言葉が出てこない。


「つわり……つらいね。」


「ずっとあるわけじゃないから。
もう少しだよ。」



なだめるように話しかける声。


いつもは大声出して!
って怒られるけど、今日は全然声が出ないから怒られないね。



「ほら、ゼリーとかブドウとか。チェリーも食べやすいでしょ。
何か食べて栄養とらなきゃ痩せちゃうからね。」


食べやすそうな物がたくさん入った袋を渡してくれる。



お母さんは赤ちゃんだけじゃなくて、私の心配もしてくれるの?


赤ちゃんのために食べなさい!
て言うんじゃなくて、
私が痩せちゃうからって………




喉の奥と鼻の奥が熱くなってきた。



ヤバい……なんでだろ…

泣いちゃいそう………



「じゃあ、暑いからもう家に行きな?今度団地のお祭りあるから、つわりが落ち着いたらおいで。」


「うん。ありがと。」



たった2、3分の会話。


たったそれだけのためにわざわざ会いに来てくれた。


こんなに暑いんだから、お母さんだって無理しないでよ。



小さくなってくお母さんの背中を見送ったら、なぜだかわからない気持ちがわき上がって頬が濡れた。



冷蔵庫にゼリーを入れながらポタポタ、ポタポタ。

久しぶりに流した涙は暖かかった。




< 59 / 185 >

この作品をシェア

pagetop