おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
実家は、都心から離れた緑豊かな団地の中にある。
父が祖母の世話をするために田舎に帰った時に私たちが育った家は売ってしまった。

育ってきた家がないのは少し寂しいけど、この自然溢れる団地に帰ってくると今までと同じくらい懐かしくなる。


お母さんは駐車場脇の花壇やベランダで趣味のガーデニングができるって気に入っているみたい。




ドドン…ドン
ドドン…ドン…



「すごい!まだ明るいのに太鼓の音!?」



団地の部屋には近くの広場から盆踊りの曲や太鼓の音がフライング気味に聞こえてくる。



「つわりおさまったの?痩せたんじゃないの?」


「も~。痩せた、痩せたってそれ3回目だよ。」


笑いながら言い返すとお母さんも妹も弟も大笑いする。
懐かしいな。
この雰囲気。


小さな居間には陽と、妹の旦那さんも座り、賑やかな宴会が始まる。



「あ、せっかくだからお酒飲もうよ!」

「えー、私飲めないし。」


妹の提案に口を尖らせる。
飲めないって宣言するのもなんか特別感あるな。



「麻那はこれね。」


差し出されたのはノンアルコールのジュース。


シュパッ


みんなが詮をあけ、乾杯のポーズをとりはじめる。

「何に乾杯?」

「久しぶりの再会かな?」

「お祭りに?」


ワイワイ騒いでいると、お母さんがずいっと身を乗り出す。


「新しい子に。無事に産まれるようにでしょ?」


お母さん…。


「そうだよ!それがいいね。」

「じゃあ、安産を願って~」

「カンパ~イ!!」


みんなで笑顔で乾杯した。

陽と顔を見合わせて、お腹に手を当てる。



みんなが待ってるよ。
ここにいるみんながあなたのこと祝福してる。
みんなが家族なんだよ。



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