おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「うわ~、すごい雨だな。」


本を読んでた陽もベランダに来ていた。



「陽。濡れちゃうよ?」

陽を見上げながら驚く。

流星群の日も、空なんか見に来ない陽が雨が降ったくらいで隣に来るなんて。



二人でしばらくボーッと雨と雷を見てた。









不思議な雨。



それはね………
明日がくればわかること……




窓辺で雨を見る私は…まだ何も知らない……




この不思議な雨は…
あなたの悲しいお別れの挨拶なんだよね………




私と、陽。
ママとパパに「さよなら。」って言いにきてくれたんでしょ?
ママとパパの顔をもう一度ちゃんと見たかったんだよね?



大きな泣き声で雨を降らせて。

「パパ!!、ママ!!来てよー!」
って私たちを呼んでくれたんだよね。




忘れ物して……
もうママのお腹にいられなくなって…
もう帰らなきゃいけない時間になって………



最後に私たちの顔をちゃんと見てから空に帰っていったんだよね。




「さよなら。」
「またくるよ。」


って。


礼儀正しくちゃんとご挨拶してくれた……




たった2ヶ月で天使になってしまった私の赤ちゃん。



忘れないよ………


「ここにいるよ。」
「ママになれたでしょ。」
「大きくなったよ。」
「動けるようになったよ」
「生きてるよ」

そして
「さよなら。」……



あなたがくれたたくさんのタカラモノは、ずっとずっと私の心の中にある。

「ありがとう。」

最後まで必死に心臓を動かして生きてるって見せてくれた天使の赤ちゃん…。




窓を閉めると後ろ髪ひかれるような不思議な気分。

雨はシトシト…

優しい雨に変わっていった。
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