おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
あれっ?



気が付くと朝になっていた。

いつもの朝。

昨日と変わらない部屋。




変わったのはひとつ。

「今日はトイレに行かなかったな…」

たったそれだけのこと。




たったそれだけだけど、夜中必ず一回はトイレに行く習慣ができてしまった私は「行かなかった」ということだけで引っ掛かる。



「今日だけのことだよね。」


気にはなったが、それ以上深く考えるのをやめて携帯を確認する。





「あ!今日は大学病院の予約の日だった!!」



時刻はまだ9時。
ベッドから降りて仕度をはじめた。




何気なく迎えた朝。

これからの朝は、これまで迎えてきた朝とは別物になることを私はまだ知らない。








大学病院は2回目。
この前見てもらってから一週間後の検診の日だった。

もう迷うことなく「母性胎児科」に向かう。




昨日も病院に行っていたのもあって、なんの不安もなく、受付を済ませ、血圧を測り、診察を待った。


前の席ではしゃぐ小さな女の子を見ながら微笑んでさえいた。




はるちゃんは男の子な予感がするけど…女の子も可愛いな…


今度は日曜日に予約をとって、陽と一緒に来よう。
この子の可愛い姿を独り占めするのはかわいそうだし。


後ろの席で幸せそうに話す、出産間近の夫婦の会話を聞きながらそう決めていた。






やがて名前が呼ばれ、いつものように診察室に入る。

……いつものように体調の話をして、いつものように内診台に座った。





昨日見た赤ちゃんの姿を思い出す。


今日は1日しかたってないから、何も変わらないかな…?


いつものように写し出された画面は…


いつもとはまるで違っていた……………
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