少年陰陽師 奥州平泉奇譚
5》奥州平泉――藤原氏の至宝
有川潤が付き添い保健室に向かう。



「なあ、普段からそんなに弱いのか?」



僕は、答えられない。



気が乱れてるだの、穢れが強いだの、そんな話をしても潤に通用する筈もない。



「祐?」



僕は、ただゆっくりと歩きながら聞こえないふりをした。



雨が降らない。


先ほど保健室で静香先生から聞いた言葉を思い出す。



渇いたような空気に愕然としながら、潤の後をおぼつかない足取りで歩く。



潤の手に触れ少し力を込めれば、潤の生気をいただけるのにと思う。



理性が飛びそうになるのを抑える。




階段を下ると数メートル先から学生の声が聞こえ、僕は寒気を覚えた。




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