レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 扉の向こうに広がっていたのは奇妙な光景だった。中にいる人の格好はばらばらだ。服装だけで爵位を持たない者、貧しい者、財を持っている者、そして貴族がいるとエリザベスには判断できてしまう。
 ソファに座った若者を、同じような年頃の若者たちが取り囲んでいる。皆エリザベスより少し年上だろうか。
 ソファに座った一人が何か朗読しているようで、囲んだ若者たちは皆それに聞き入っていた。

 かと思えば、広間の別の壁側には立派なグランドピアノが置かれている。ピアノに向かっているのは派手なドレスをまとった中年女性。歌っているのは彼女と同じ年頃の女性だ。
 壁際には絵が立てかけてあって、その絵の前で熱心に語り合っている人たちもいる。
 ビリヤードの台を囲んでいるのは中年の男性たちだ。彼らは何を話しているのだろう。

「ダスティ!」
 ミニーの声は、人混みの中でもよく響く。
「新しいお客様ですか?」
 絵を見ていた一団から抜け出て近づいてきた彼は、ミニーにたずねた。その彼の顔を見て、エリザベスは口をぽかんとあけた。ダスティだ。本物のダスティ・グレンがここにいる。
< 101 / 251 >

この作品をシェア

pagetop