レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「彫刻を保存しておくには不適切な環境ですな」
「一般的にはそうでしょうね。屋根裏といってもわが家では商品を保管しておく場所として利用できるように改築してあるのよ。本当は使用人を寝起きさせる場所らしいんだけど、家の使用人達には全員個室を与えてあるから、使ってなかったし」
「なるほど」

「それはともかく――よ。そんな品があることなんて私は口外したことないの。なのに、何で押し入った賊は時計を持って行ったのかしら? 聖骨が入ってなければ、安物の時計でしかないのに。安物なんか持って行っても困るでしょう?」
 それを聞いたヴェイリーは、愉快そうな表情になった。

「それで、リズ。あなたはどうお考えなのかな?」
「さあ。楽園騎士団が聖骨を集めて回ってるっていう記事は見たけど――あの人達なら聖骨をほしがる理由もわかるわ。信仰の対象ですものね。でも、聖骨の在処を知っている理由にはならない」
 本当のところはわからないから、エリザベスも正直に返す。肩をすくめて、仕草でもそれを表して見せた。

「……聖骨をほしがるのは楽園騎士団だけではないはずですがね」
 エリザベスの仕草に感銘を受けたわけでもないのだろうが、ヴェイリーは新たなヒントを出してくれる。エリザベスはそれに飛びついた。
「教会、好事家、好事家に売りつけたい骨董点の店主?」

 エリザベスの言葉を否定したわけでもないのだろうが、ヴェイリーは指を一本立てて、もう一つ追加する。
「錬金術に傾倒している者」
「錬金術? それって、大嘘なんじゃないの?」
「一般の人はそう思うでしょうな」
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