レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
ダスティとの再会
 車から降り立ったリチャードは、エリザベスとその後ろに隠れるようにしているロイに目をやった。にこりとして、エリザベスは「遠方から遊びに来た友人」を紹介する。
「リチャード、お友達のアルマ・シャーレーよ」
「よろしく。どうぞ……アルマと呼んでいいのかな?」
「ええ」
 エリザベスを真ん中にはさみ、リチャードとロイは笑顔で挨拶を交わしあった。リチャードはロイの女装を怪しんでいる様子もなく、一気に和やかな雰囲気が出来上がる。
 エリザベスを真ん中に挟み、後部座席に三人が並んで座った。

「少し内気なのかな?」
 会話に加わる気もないのだが、リチャード相手にどうしたらいいのかわからない様子でもぞもぞとしているロイを見て、リチャードはエリザベスにささやく。
「ええ。田舎から来てくれたの。あちらではお父様の農場を手伝っているのよ」
 女装したロイの身の上については、本物のアルマ・シャーレーのことを語っておく。どうせ本物とリチャードが顔を合わせる機会があるとも思えない。

 エリザベスの言葉に、どうやら「アルマ」は人見知りだと思ったようだ。田舎で父の農場を手伝っているとなれば、身内以外の人間と顔を合わせる機会はあまりない。
 リチャードは身を乗り出し、エリザベス越しにロイに話しかけた。
「そうなんだ。今日の会は君には退屈かもしれないね。話のうまい奴はいないし――でも気のいい奴ばかりだから」
「……とんでもないです」
 あまり長く話すと男だとばれてしまうかもしれないと恐れているのだろう。言葉少なにロイは返して、伏し目がちにあいまいな微笑みを浮かべた。
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