レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難

 パーカーは、立ち上がって壁際の本棚へと向かう。そこにずらりと並んだファイルから一冊を選んで抜き出すと、中をあちこち比較検討し始めた。

 その様子を眺めながら、エリザベスは息をつく。猛然と仕事をしていたのは、アンドレアスに会いに行く口実を作るためだった。
 今のところ、おとなしくしているからパーカーがいぶかしんでいる気配はなかった。

 ◇◇◇
 
 翌日、昼食の時間を狙ってエリザベスはアンドレアス商会の事務所を訪れた。
「これはこれは、お嬢様」
 前回さんざん脅されたアンドレアスは腰が低かった。上役に話がいったということもあるのだろう。まさか、エリザベスがああいう手段に出るとは彼も思っていなかったはずだ。

 彼は、エリザベスを事務所の奥へと案内する。会議室であろうその部屋には、丸いテーブルが一つと、資料と思われる本がずらりと並んでいた。
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