レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 穏やかな表情で見つめる彼のことは嫌いじゃない。ダスティを見る時のようにどきどきすることもないし、遠い昔の初恋のような切なさを感じるわけでもないけれど——でも、嫌いではない。
 
 ——それでも、今は、彼との未来を考えられそうもない。

「……ごめんなさい」
「いいよ。なんとなくはわかっていたから」

 そうじゃない、と彼に向かって言うことはできなかった。彼となら未来を考えられるかもしれない、と思ったことも事実なのだ。

 ただ、今は他に考えなければならないことがたくさんある。
 今抱えている問題を片づけなければ、未来を見つめることなんてできそうもなかった。
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