レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「パーカー、オレンジをもう一つ欲しいんだけどまだあるかしら。厨房に聞いてくれる?」
「はい、すぐに確認してまいります」

 パーカーを追い払っておいて、エリザベスはトーストにかじりついた。トーストを半分まで食べ、卵に手をのばす。

 香りのいいコーヒーを二口飲んで、今度はサラダにフォークを突き立てた。

 朝食をほとんど食べ終えた頃、厨房から追加のオレンジが運ばれてくる。それもきれいに片づけて、エリザベスは立ち上がった。

「仕事場にはいるわ。パーカー、コーヒーをポットにめいっぱい運んでちょうだい。それが終わったら、午前中は楽にしていてくれてかまわないから」

 今朝のエリザベスは、白いブラウスに青いロングスカートを合わせている。青いパンプスは買ったばかりの物だ。

 エリザベスが仕事部屋に入った時には、マギーがまだあわただしく動き回っていた。エリザベスの部屋の掃除に手間取って、こちらに回るのが遅れたらしい。

「リズお嬢さん、ごめんなさい。今朝は掃除が終わらなくて」

「机の上だけ拭いてちょうだい。そうしたら、仕事に取りかかりましょう。一日くらい掃除しなくても死なないわよ」

 笑って、エリザベスはマギーが机の上を拭いている間、壁のファイルから一冊抜き取ってそれを眺めていた。
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