レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 その日の深夜、エリザベスは裁縫道具を持ち出して、短く切った乗馬ズボンの裾をまつった。
 出来上がりはひどいものだが、人に見せるためというわけではないから気にしなくていい。

 針で手を何度も刺してしまったから、絆創膏だらけでマギーに奇妙な目で見られたけれど、そこは笑ってごまかした。

 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

 ふわぁ、とあくびをしながらエリザベスは朝食の席に着いた。このまま、テーブルの上で眠ってしまいたいくらいだ。

「お嬢様、今朝はコーヒーになさいますか」

 すかさずパーカーが、エリザベスの様子を見て声をかけてくれた。たしかに今はコーヒーが欲しい気分だ。

「コーヒーにしてくれる?」
「かしこまりました」

 かりかりになるまで焼いたトースト、スクランブルエッグ、ベイクドポテトにサラダ。トーストにはたっぷりのバターと蜂蜜を添えて。
 オレンジも出されているが、少し物足りないような気がした。今日は身体が果物を欲しているらしい。
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