レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難

 レディ・メアリにプレゼントするものはあらかじめ決めていた。

 大きな銀のブローチだ。繊細な細工の施されているブローチがいい。
 だから真っ先に目指したのは、宝飾品を扱っている店だった。きっと、ここでなら気に入る品が見つかるはずだ。

「これはこれは、お嬢様。今日は何をお探しですか」

 得意客であるエリザベスのところには、真っ先に店員が駆けつけてきた。ブローチを、との言葉に、店の奥から美しい宝石をあしらったブローチがいくつも出されてくる。

「そうね、これとこれが素敵ね……こっちもいいけど……いいえやめておきましょう。アクアマリンは叔母様の目の色には合わないもの」

 最終的にエリザベスは二つのブローチを選び出す。
 片方は何種類もの花をあしらった花束をかたどったもの。もう片方は、手を合わせた天使の姿をかたどったもの。天使の翼の根本にアメジストがはめ込まれている。

「そうね——花束の方が叔母様の趣味に合うかしら。きれいにラッピングして屋敷まで届けてもらえる? 持ち歩くのは怖いもの。支払いはその時に——そうそう、金のリボンをつけるのを忘れないで」
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