レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスは何度もこの店で買い物をしている上得意だ。店員もエリザベスの頼みならたいていのことは断らない。
 金のリボンがなかったとしても、誰かが調達してくることだろう。

「お届けはいつにしましょう?」
「そうね、叔母様のお誕生日はまだ先だけれど……明日届けてもらえると嬉しいわ」
「かしこまりました。明日の午後、お届けいたします」

 品物を選び終えた後、エリザベスは店員に別れを告げて、大急ぎで百貨店を後にする。裏口から出て地下鉄の駅まで走った。

 パーカーにはアンティークショップを回ってもいいものが見つからなかったから百貨店に戻ったと言い訳をするつもりだけれど、エリザベスの使うことのできる時間はさほど多くない。
 
 十五時にレクタフォード十五番地にたどり着くためには、急がなければならない。
 地下鉄を二本乗りついで、レクタフォード街にたどり着く。階段をのぼって地上に出ると、先日車の窓から眺めた景色が目の前に広がった。
 
 周辺のざわざわとした店には目もくれず、エリザベスはまっすぐ十五番街を目指した。
< 219 / 251 >

この作品をシェア

pagetop