レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「……あら」

 あの時計にはめ込まれた聖骨と似たような形の石が転がっている。それを拾い上げたのは、なんとなく——お守りのような気分だった。
 
 午後になって、百貨店に向かう準備をする。スカートの下には短く切った乗馬服のズボンをはいて、肩から小さなバッグを提げた。

 玄関前には時間通りにトムが車をつけて待っていた。エリザベスはパーカーに行き先を告げ、百貨店の前で車を降りる。

「ここでいいものが見つからなかったら、アンティークショップに回ろうと思っているの。何時になるかわからないから、あなたはここでいいわ」
「お帰りはどうするんですかい?」
「地下鉄で帰るか、百貨店から電話をするわ。屋敷で待っていてちょうだい」
「いいですよ。どっちにしても、そろそろ庭木の手入れしないといけませんからね。お電話お待ちしていますよ」

 百貨店の前でトムの運転する車から降り立ち、エリザベスは店内へと勢いよく進んでいった。
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