レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 到着するも、建物の正面入り口は施錠されていた。裏口に回ってみる。こちらも施錠されている。エリザベスは、建物を見上げた。

 雨樋を伝えば、屋上にたどりつくことができそうではあるが——。

「さて、どうしようかしら」

 左右を見回して、エリザベスは考え込む。人通りはない。左右の建物の窓は木の鎧戸で完全に塞がれている。素早く上ればなんとかなりそうだ。
 
「よし」

 エリザベスは雨樋を眺めた。一番手っとり早く、一番人目につきにくそうなルートを目で追う。しばらく視線を走らせた後、にやりと笑うと両手を雨樋にかけた。

 大陸にいた頃、もっと困難な場所をよじ登ったこともある。そのまま手足の力だけで器用によじ登ると、あっという間に屋上に到達した。

 屋上には人の入った気配はなかった。何年もの間、誰も立ち入っていないようだ。
 屋上への出入り口である扉へと近づき、ドアノブをがちゃがちゃやってみるが、鍵がかかっているようだ。
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