レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスは扉から入るのをあきらめて、別の場所からの侵入を試みる。たまったゴミの上を慎重に進んでいくと、小さな窓があった。屋根裏に通じているようだ。
 その窓を押してみる。こちらも当然鍵がかかっているが、うまく開くことができそうだ。
 
 器用に窓枠を外し、中へとエリザベスは降り立った。 
 どちらかといえば小柄なエリザベスがようやく通り抜けることのできるくらいの大きさしかないから、ここから入る者もいないと思っているのだろう。

 そこの部屋にも埃がつもっていて、足跡一つなかった。

 数歩進んで彼女は背後を振り返る。そこには彼女の小さなブーツの跡がしっかりと残っていた。バッグからハンカチを取り出して、足跡の形がわからなくなるまで乱してからエリザベスはまた歩き始める。
 
 数歩進んでは跡を消し、数歩進んでは跡を消してエリザベスは屋根裏の扉まで到達した。扉をそっと開いて廊下へと滑り出る。
 廊下の床には茶色いカーペットが敷かれていた。膝をついて見てみれば、かなり上質のものだ。このような建物で使われるには、少しばかり品質がよすぎるようにも思える。
 
 建物の中はしんと静まり返っていた。立ち上がり、歩き始めると上質なカーペットは完全にエリザベスの足音を飲み込んだ。
 
 廊下の先には、階段がある。用心深く近づくと、そこでようやく人の気配に出会った。
< 221 / 251 >

この作品をシェア

pagetop