レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 言うことはないはずなのだが——それがむしろ気になってしかたない。
 
 エリザベスに仕えてきた勘が訴えかけてくるのだ。エリザベスがこのままでおとなしく引き下がるはずはない、と。
 
 はなはだ不本意ながらエリザベスはテレンスもダスティも気に入っているようだった。所属する階級が違うなどということは気にもかけず。

 それなのに、レディ・メアリに言われておとなしくしているということは、何か裏があるように感じられてならない。

 ——あくまでも彼自身の思いでしかないのだけれど。

「パーカーさん、お湯が沸きましたよ」

 キッチンメイドがポットにお茶を注いでトレイに載せる。それをエリザベスの部屋へと運びながら、パーカーは考え込んでいた。

 主は何かたくらんでいる——目を離さないようにしなければ。

 あいかわらず存在感を主張してる胃をなだめながら、パーカーは仕事部屋の扉を叩いて入室の許可をもとめた。
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