神様のおもちゃ箱

俺は思わず頭を抱えた。


おいおいおいおい。

何で?

何で今、俺の部屋の前に望乃がいるんだ?


ただでさえ面倒くさいのに、さらに面倒くさい事になってきちゃったじゃねぇか…!



あんなメールよこしたくらいだから、もう家を出てると思って完全に油断していた。

今この部屋の状況を望乃に見られると、非常にまずい。


いや、誰に見られてまずいけど、望乃だから余計にまずい。


ど、どうしよう。

とりあえず落ち着け、俺!


大丈夫だ、居留守を使えばバレな…


「くしゅん!」


…うそだろぉよ。

由紀子さんは口を押さえて、きょとんとした。

どれだけ図ったタイミングだよ。


「健吾ーっ何してんのー!」


わかった。俺は逃げない。

俺は再び、とりあえず作戦を実行する事にした。

とりあえず深呼吸し、冷静になれと自分に言い聞かせた。


「キャ!」

まずは由紀子さんに布団をかぶせて隠し、しーっと促した。

そして何事もなかったかのような、平静を装った“いつもの俺”の顔を作り上げると、小さく咳払いをして小さくドアを開けた。


隙間からは、ご機嫌な望乃の顔。

笑うと三日月になる目が、俺を見ている。


「おはよう、健吾!」

「おはよう…」

「実はあたしも寝坊しちゃってさぁ、一緒に遅刻しようと思って」

「えっと、望乃ちゃん」

「ほら、早く早く!」

「望乃」


少し強めに言うと、望乃は不機嫌そうな顔で「もう、なに」と俺の顔を見た。



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