白い闇に囚われてー刹那の風花ー【完】


「え」
 


壱星に両親?



「そっか。壱星にも両親がいるんですね」



「そこからして没概念かい」
 


そうかそうかと肯くと、滝篠教授は呆れたように息を吐いた。
 


俺を見ていた目が、庭に向く。



「私には一人娘がいた。壱星の母親だ。

十六で身ごもって、相手と二人、この街を出た。私が反対したからだろうか。

……それから少しして、娘は赤ん坊の壱星を抱いてやってきた。息子の名前だけを告げて、そのまま消えた」



「壱星も、親がいないんですか?」



< 290 / 385 >

この作品をシェア

pagetop