白い闇に囚われてー刹那の風花ー【完】
「え」
壱星に両親?
「そっか。壱星にも両親がいるんですね」
「そこからして没概念かい」
そうかそうかと肯くと、滝篠教授は呆れたように息を吐いた。
俺を見ていた目が、庭に向く。
「私には一人娘がいた。壱星の母親だ。
十六で身ごもって、相手と二人、この街を出た。私が反対したからだろうか。
……それから少しして、娘は赤ん坊の壱星を抱いてやってきた。息子の名前だけを告げて、そのまま消えた」
「壱星も、親がいないんですか?」