苺なふたり




「信吾はとりあえず亜季の実家に挨拶に行くって言ってるの。高校の時から亜季と付き合っていても、やっぱりまだ遠慮があるみたいでね、亜季のご両親にお土産持って行くから私は今度にしてくれって」
「亜季のご両親って、医者だよな」
「そ。開業医だし、いずれは信吾が継ぐって話が出てる。信吾のお母さんは養子にとられるみたいで複雑だって落ち込んでたけど、まあ、そうなるんじゃないかな」
「で、いつものように、『百花ちゃんがお嫁にきてくれると思ってたのに』って泣かれたか?」
「え?どうしてそれが」
「ん?だって、昔は百花だってそれを望んでたって知ってるし。それが叶わなくて泣き通しだったのも近くで見ていたし?」
「……ほんと、やな男」

 私をからかうことを生活の一部として楽しんでいる功司は、いつものように私が拗ねるとわかっていることを言っては面白がっている。

「やな男って、褒め言葉か?」

 なんて言いながらコーヒーを飲む姿は悔しすぎるほど整っていて、組まれた足の長さと小さな顔も相まってモデルのようだ。

 カフェの中にいる女性たちの視線からハートがいくつも飛んできて、露骨すぎるほどの注目を浴びている。

 あ、広いお店の端に立っている店員さんだって功司を見てる。

 仕事しなさいよ仕事。

 本当、功司の見た目に騙されてるって大声で言いたい。

 功司の見た目の良さは認めるけど、この男の腹黒さと言えば折り紙つき。

 自分が望むものを望むように手に入れるまでは、絶対に手を抜かないし作り笑顔という最強の武器を使って人生を楽しーく生きている。

 高校時代からその兆候はあったけど、弁護士先生となった今では、見た目の良さだけでなく財力だって身につけて、無敵の男になってしまった。




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