黒薔薇~美しき欲望~
奥野side*
「あれが、魔女……」
貰った名刺を見つめながらボソッと呟く。
何の変哲もない社会人が良く使ってそうな名刺。
クラブ名と名前だけが書かれているというシンプルな物だ。
「はぁ………」
隣で盛大なため息が聞こえる。
「唯人(ゆいと)、あの女何だよほんと」
「類(るい)…。でもまぁ、まさか俺らを相手にするとは意外だったな」
奥野唯人は俺の名前。
市川類は左隣の名前。
ちなみに右隣は大野大和(やまと)。
すげぇ男たちを虜にしている魔女っつー女がいると聞いてたが、実際見るのは初めてだし、それだけ言われるほどの美貌を劣らず持っていた。
今まで会った、どの女よりも綺麗で妖しかった。
初めて見たときはオーラってのがやっぱりあって、これがあの噂の…と直ぐに分かったほどだ。
「……むっちゃエロかったな、サラさん。俺、勃つの抑えるのに必死だったわ」
「……大和、お前何たぶらかされてんの」
「いや、あの体見て平常心でいられるとか男じゃねぇって!類、お前男として終わってんな」
「いや、もっと警戒しろよ」
二人の会話をぼんやりと聞きながら、名刺を見つめ続ける。
「男なんて本能で生きてなんぼだぞ」
「理性持てよ、猿が」
「男として俺は終わりたくない」
「まじで一度死ねよ」
「お前は男として死んでんな」
………はぁ、とため息をついた。
これは誘いなんかではなく"強制"なのだろう。
もしも魔女の機嫌を損なう事なんてあれば……。
思わぬ絶対者との接触に、またため息が漏れた。
奥野side*END