傘

… 環 …

　4限目――必須となる専門科目の講義中から降り出した雨は、大教室を出る頃にはすっかり本降りとなっていた。

　それは、まるで今の環（たまき）の心を表すかのように……。


「わたし。濱名さんのことが……好きです」
　籍を置いている学科のアシスタントをしている院生に想いを告げたのは、先週末のことだった。

「来週まで待っててもらっていい？」

　それを拒絶することは出来なかった。

　燃え上がった気持ちを静めるための時間が彼にも、そして環自身にも必要なのは明白だったから。

　このタイミングでこんなことを言うのがまずいのは百も承知だった。でも、押さえつけることが出来なかった……。