ただの先輩後輩の仲ではじまった関係に恋愛が絡まったのは、進級して間もない4月頭。

 学科内サークルに院生ながらもちょくちょく顔を出していた彼が、就職活動や修士論文などで忙しくなり姿を見せる回数が減ったことで気づいた想い。

 部屋に行けば会える。

 アシスタントとして現れる専門科目に出れば、彼の姿を確認出来る。

 些細な出来事が積み重なって生まれる想いがあることを初めて知ったけれど、環は彼への気持ちを押し隠すことしか頭になかった。

 忙しくなることは十二分にわかっているのに、こんな風に想っていること自体が申し訳なくて。

 彼はきっと、困ってしまう。

 誰にでも優しいひとだから、こちらが押してしまえば形はどうあれ傷つけまいといろいろ考えさせてしまうと思うから。

 事実、彼に想いを告げたと噂の立った学科生は……。


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