今さら恋なんて…
「うん。じゃぁ、次はショートで」
あたしはそう羽生くんにオーダーした。
「かしこまりました」
羽生くんは頭を下げると、お酒を選び始める。
ドライ・ジンとドライ・シェリーとドライ・ベルモット。デュポネにグラン・マルニエがカウンターに並べられる。
ミキシング・グラスに氷と水を入れた羽生くんは、バースプーンで掻き混ぜた後、水を捨て、そこにお酒を順番に入れていく。
バースプーンでカクテルを混ぜた後、それをカクテルグラスに注いだ。
「お待たせ致しました。“バーテンダー”です」
羽生くんのすらっとした指が、磨かれたカクテルグラスをサービスしてくれる。
「…いただきます」
ムダがない所作に見とれていたあたしは、弾かれた様にグラスに手を伸ばした。