今さら恋なんて…
「…う、うん…。ほら、龍哉も座って」
あたしを説得するために立ち上がっていた龍哉をあたしは席に戻らせた。
「……はい」
ちょっと文句言いたそうな顔をした龍哉だったけれど、席に座ってくれる。
羽生くんはカウンターにテキーラとホワイト・キュラソーのボトルを置いた。
「…!」
ドクン、って心臓が嫌な音を立てる。
…違うよ。きっと違う…。
そう思うあたしの思いとは裏腹に、羽生くんはシェーカーにテキーラとホワイト・キュラソー、グレープフルーツジュースとグレナデン・シロップを注ぎ、鮮やかな手つきでシェークする。
そして、グラスに満たされる淡いオレンジ色のカクテル…。