今さら恋なんて…
「…お待たせ致しました。こちらは“打ち解ける”という意味のカクテル、“アイス・ブレーカー”でございます。ぜひ、こちらを味わって、お2人が“打ち解け”て、和んでいただければ、と思います…」
羽生くんの手で、グラスがサービスされ、あたしはそれに手を出すことも出来ずに、固まっていた。
「…司さん?…え…」
「…前園様…」
あたしの方を振り返った龍哉も、グラスからあたしの顔に視線を移した羽生くんも、目を見開いて固まってしまった…。
俯いて、長い黒髪で隠そうとしたけど…無理だったみたい。
黒いカウンターテーブルには、点々とあたしの涙が落ちていた。
「…っ…」
あたしは頬を伝う涙を指でぐっ、と拭う。
「司さん…大丈夫、ですか…?」
「…ダメ…」
あたしは首を横に振る。