今さら恋なんて…
「…あの時の…エビフライ君よね?」
クロークカウンターに手を掛け、あたしはそう訊いた。
その瞬間、彼はあの時みたいに目を丸くすると、
「…あ…その節は…大変失礼致しました」
って、あたしに深々と頭を下げた。
彼もあたしのこと、思い出したみたいだ。
「あの時のことはもう謝らないで。あたしも忘れたいし…」
「左様でございますか…」
「でもね」
「は、はい?」
「ちょっと今度時間作って」
あたしは、クラッチバックを探ると、名刺入れを取り出す。
「あ、あの…お客様?」
「今度、ウチに来て」
あたしは名刺を彼に差し出した。