今さら恋なんて…
そう。
シゲハルと飲む時…いつも、知らない間に会計が済まされていて、あたしはお金を払ったことがなかった。
最初は付き合ってもいない相手におごられるのが嫌で、抵抗したけど、もう抵抗するのも疲れてしまって…最近じゃ、“気のない相手に毎度毎度口説かれる報酬をお酒でもらう”っていう風に思うことにした。
それじゃなきゃやってられないから…。
「…送ってくれるの?」
「タクシーなら呼んでやる」
「……」
「…フラれたつーに漬け込むほど落ちぶれちゃいねぇよ」
「……ムカつく。シゲハルのクセに…」
「何とでも言え」
シゲハルは苦笑いを浮かべると、アイス・ブレーカーを飲んだ。
「…今まで送ってくれなかったのも…あたしに“漬け込みたくない”から?」