今さら恋なんて…



そう。

シゲハルと飲む時…いつも、知らない間に会計が済まされていて、あたしはお金を払ったことがなかった。


最初は付き合ってもいない相手におごられるのが嫌で、抵抗したけど、もう抵抗するのも疲れてしまって…最近じゃ、“気のない相手に毎度毎度口説かれる報酬をお酒でもらう”っていう風に思うことにした。


それじゃなきゃやってられないから…。


「…送ってくれるの?」


「タクシーなら呼んでやる」


「……」


「…フラれたつーに漬け込むほど落ちぶれちゃいねぇよ」


「……ムカつく。シゲハルのクセに…」


「何とでも言え」

シゲハルは苦笑いを浮かべると、アイス・ブレーカーを飲んだ。


「…今まで送ってくれなかったのも…あたしに“漬け込みたくない”から?」



< 137 / 479 >

この作品をシェア

pagetop