今さら恋なんて…
「…マジで借りてきた猫みたいだな」
「…うるさい」
「どうやったら手懐けられるのかな…」
シゲハルは、すっと手を伸ばして、あたしの黒髪を撫でた。
「……」
思わずピクン、と反応してしまって、トーストを落としそうになる。
「…まだ警戒してるから、食事の邪魔したら怒られそうだな」
シゲハルは目尻をくしゃくしゃにして笑うと、ゆっくりと手を引っ込めた。
「……」
あたしは早く食事を終わらせて帰ろうと思い、トーストに齧り付く。
「…今日は予定あるのか?」
すでに朝食を食べ終わっていたシゲハルがコーヒーを飲みながら訊いた。
レモンが利いたドレッシングの掛かったレタスを頬張りながら、あたしは首を横に振る。